今回は、数え切れないほどのママたちの心と体に寄り添ってこられた、ベテランの助産師さんにお話を伺いました。「産後の抜け毛で相談に来られるママは、本当に多いんですよ」と、彼女は優しい笑顔で語り始めます。「皆さん、『病気なんじゃないか』『このまま戻らなかったらどうしよう』と、深刻な顔をされています。そんな時、私はまず『大丈夫、それはママになった勲章の一つですよ』とお伝えしています」助産師さんの視点から見ると、産後の抜け毛は、体が正常に妊娠前の状態に戻ろうとしている証拠であり、むしろ自然で健康的なプロセスなのだと言います。「妊娠中に増えた女性ホルモンが出産を機に元に戻る。そのダイナミックな変化に、髪の毛が反応しているだけ。まずは、この体の仕組みを理解して、安心してもらうことが何よりも大切です」また、彼女は精神的なケアの重要性も強調します。「育児が始まると、女性は自分のことを後回しにしがちです。睡眠不足、栄養不足、そして社会から隔離されたような孤独感。これらのストレスが、自律神経を乱し、血行を悪くして、抜け毛に拍車をかけてしまうことがあります。だから、私たちは『完璧なママにならなくていいんだよ』『少しでも休める時には休んでね』と、とにかくママ自身を労う言葉をかけ続けます」食事やヘアケアに関する具体的なアドバイスと同時に、こうした心のケアが不可欠なのです。一方で、注意すべき点についても言及がありました。「通常、産後の抜け毛は1年ほどで自然に落ち着きます。しかし、1年以上経っても全く改善が見られない、あるいは抜け毛以外にも、極度の疲労感、体重の急激な変化、気分の落ち込みといった症状が続く場合は、甲状腺機能の異常など、他の病気が隠れている可能性も考えられます。その際は、一人で抱え込まずに、産婦人科や内科、皮膚科などを受診するようお勧めしています」産後の抜け毛は、ほとんどの場合、心配のいらない生理現象です。でも、その背景にあるママたちの不安や心細さに寄り添い、正しい知識と安心感を提供することが、私たち専門家の役割なのだと、助産師さんは語ってくれました。
助産師が語る産後の抜け毛との穏やかな付き合い方