髪の主原料であるタンパク質を十分に摂取していても、それだけでは健康な髪は作られません。摂取したタンパク質を、実際に髪の毛の成分である「ケラチン」へと再合成する、いわば「建設作業員」のような役割を果たす、重要な栄養素が存在します。その代表格が、ミネラルの一種である「亜鉛」です。亜鉛は、私たちの体内で、実に300種類以上もの酵素の働きを助ける補酵素として機能しています。その中でも特に重要なのが、タンパク質の代謝、つまりアミノ酸の再合成に関わる働きです。食事から摂ったタンパク質は、一度アミノ酸に分解されて吸収され、その後、体の各所で必要とされるタンパク質に作り替えられます。髪の毛のケラチンも、このプロセスを経て作られるのです。この時、亜鉛が不足していると、ケラチンの合成工場がうまく稼働せず、せっかく摂ったタンパク質も、効率的に髪の毛へと変換することができなくなってしまいます。これが、亜鉛不足が抜け毛や髪質の低下に直結する大きな理由です。さらに、亜鉛には、AGA(男性型脱毛症)の原因となる酵素「5αリダクターゼ」の働きを抑制する効果があることも報告されており、抜け毛予防の観点からも非常に重要なミネラルと言えます。しかし、亜鉛は体内で作り出すことができず、また汗などによって失われやすいため、意識して食事から摂取する必要があります。亜鉛を最も多く含む食材として知られているのが「牡蠣」です。その他にも、牛肉の赤身やレバー、うなぎ、チーズ、ナッツ類などにも豊富に含まれています。外食や加工食品が多い現代の食生活では、亜鉛は不足しがちな栄養素の筆頭です。もし、抜け毛の増加とともに、肌荒れや味覚の異常、爪に白い斑点ができるといった症状が見られるなら、それは亜鉛不足のサインかもしれません。髪の名脇役である亜鉛をしっかりと補給することが、抜け毛対策の隠れた鍵となるのです。
名脇役ミネラル「亜鉛」が抜け毛を防ぐ