六十歳という節目の年齢を迎え、長年連れ添った会社を定年退職した時、私を最も悩ませていたのはこれからの生活への不安ではなく、鏡の中に映る寂しくなった自分の頭頂部であり、これまで忙しさを理由に見て見ぬふりをしてきた薄毛の現実でした。退職後の送別会で撮られた記念写真を見た時、周囲の同世代よりも明らかに老けて見える自分の姿に強いショックを受け、このまま枯れていくようなシニア生活を送るのかという絶望感に襲われましたが、同時にまだ自分を諦めたくないという強い思いが湧き上がり、意を決して薄毛治療について調べ始めたのがすべての始まりでした。最初は、この年齢で髪に執着するのは恥ずかしいのではないかという自意識がありましたが、インターネットで調べると60代でも多くの男性がオンライン診療を利用して治療に励んでいることを知り、勇気を出して予約を入れたあの日の緊張は今でも鮮明に覚えています。画面越しの医師は私の不安を丁寧に聞き取ってくれ、60代のAGA治療がいかに一般的であるか、そして健康状態に配慮した処方が可能であることを論理的に説明してくれたため、半信半疑ながらも提案された治療プランを開始することにしました。治療を始めて最初の三ヶ月は目に見える変化がなく、やはり無駄だったのかと諦めかけたこともありましたが、医師のアドバイス通りに毎日の服薬と頭皮マッサージを欠かさず続けたところ、半年が経過した頃に美容室の担当者から髪にコシが出てきたと指摘され、自分でも鏡を見た時に地肌の透け具合が改善されているのを確信した時の喜びは言葉では言い表せないものでした。髪の毛に変化が現れると不思議なことに内面的な自信も回復し、以前は避けていた趣味の集まりや旅行にも積極的に出かけるようになり、周囲からも何だか若々しくなったねと声をかけられる機会が増え、外見を整えることがいかに精神衛生上重要であるかを身をもって痛感しました。今では朝の洗面台で髪を整える時間が楽しみの一つとなり、定年後の新しいキャリアとして始めたコンサルティングの仕事でも、堂々と相手の目を見て話せる自信が大きな支えとなっており、60代という時期に自分の外見と真摯に向き合ったことは、人生の後半戦をより豊かにするための最良の決断だったと断言できます。もし同じように悩んでいる同世代の方がいるなら、年齢を理由に蓋をするのではなく、科学の力を借りて自分をアップデートする喜びを知ってほしいですし、人生百年時代において60代はまだまだ現役であり、自分らしく輝き続けるために髪のケアという投資を始めるのに遅すぎるということは決してありません。
定年を迎えた私の髪の悩みと新たな一歩