ミノキシジルを使い始めると、なぜ頭髪だけでなく、全身の体毛まで濃くなる「多毛症」が起こるのでしょうか。そのメカニズムは、ミノキシジルが持つ「血管拡張作用」と「毛母細胞への直接的な働きかけ」という、二つの主要な作用に由来します。まず、ミノキシジルは強力な血管拡張剤です。内服薬として服用した場合、その成分は血液に乗って全身を巡り、体の隅々にある毛細血管を拡張させます。これにより、全身の血流が改善されます。髪の毛も体毛も、毛根にある毛母細胞が、毛細血管から運ばれてくる酸素や栄養素を受け取って成長しています。ミノキシジルによって血流が良くなることで、これまで栄養不足で十分に成長できなかったり、休眠状態にあったりした全身の毛根が、豊富な栄養供給を受け、活性化されてしまうのです。これが、多毛症が起こる大きな理由の一つです。いわば、頭皮という特定の畑だけに水をやろうとしたら、その水路が全身に繋がっていたため、他の畑の作物まで元気に育ってしまった、というイメージです。さらに、近年の研究では、ミノキシジルが単に血行を促進するだけでなく、毛母細胞そのものに直接作用し、細胞の増殖を促したり、アポトーシス(細胞の自然死)を抑制したりする働きがあることも分かってきています。また、髪の成長に関わる特定の成長因子(VEGFなど)の産生を促すことも報告されています。これらの作用もまた、血流に乗って全身の毛根に及ぶため、頭皮以外の体毛の成長サイクルまでをも活性化させ、多毛症を引き起こす一因となると考えられています。つまり、ミノキシジルによる多毛症は、その強力な発毛促進作用が、意図せず全身に及んでしまった結果として現れる、効果の裏返しの現象と言えるのです。