三十代に突入し、仕事の責任が重くなるにつれて、僕の生活は不規則そのものになっていった。朝はコーヒーだけ、昼はデスクでかきこむカップラーメン、夜は付き合いの飲み会で、深夜に帰宅してはバタンキュー。そんな生活が祟ったのか、ある頃から、シャワーを浴びるたびに排水溝が髪の毛で黒くなるようになった。最初は気のせいだと思っていたが、ある日、合わせ鏡で見た自分の頭頂部が、明らかに地肌が透けているのを見て、僕は愕然とした。焦った僕は、まず高価な育毛剤に手を出した。しかし、何か月使っても、抜け毛の量は変わらない。そんな時、ふと手にした健康雑誌に書かれていた「髪は、あなたの栄養状態を映す鏡です」という一文が、僕の心に突き刺さった。考えてみれば、僕の体は、栄養失調状態だったのだ。その日から、僕は「自分の体を、髪を、内側から変えてやる」と決意した。まず、毎朝コンビニで買っていた菓子パンをやめ、自分で納豆ごはんと味噌汁を作ることから始めた。昼は、愛妻弁当を持参し、夜の飲み会も週に二回までと決め、それ以外の日は家で魚や野菜中心の食事を摂るようにした。最初は面倒だったが、続けていくうちに、体が軽くなり、朝の目覚めが良くなっていることに気づいた。髪への変化は、すぐには現れなかった。しかし、三ヶ月が経った頃、ふと気づいた。シャンプーの時の指に絡まる抜け毛が、明らかに減っているのだ。そして半年後、美容師さんに「最近、何か始めました?髪にコシが出てきましたね」と言われた時、僕は心の中でガッツポーズをした。抜け毛が減っただけでなく、髪の一本一本が力強さを取り戻していた。栄養という土壌を豊かにすれば、髪はちゃんと応えてくれる。僕のこの経験は、抜け毛に悩む多くの人にとって、一つの希望になるかもしれない。高価な薬の前に、まず見直すべきは、毎日の食卓なのだと。
私が栄養バランスで抜け毛を克服した話