定年退職から数年が経過した六十五歳の私は、それまで趣味の盆栽やウォーキングに満足していたつもりでしたが、同窓会での記念写真に写った自分の後頭部があまりにも寂しくなっているのを見て、隠しきれない老化の波に激しい衝撃を受け、それまで無頓着だった薄毛の悩みがいきなり生活の優先順位のトップに躍り出ました。最初は薬局で買える高価な養毛剤を何ヶ月も試しましたが、期待したような変化は現れず、半ば諦めかけていた時に息子から最近はオンラインで専門医の診察が受けられると教えられ、半信半疑のまま予約を入れたことが私の日常を大きく変えるきっかけとなりました。オンライン診療という新しい形式に最初は戸惑いもありましたが、自宅のリビングでリラックスした状態で、専門的な知識を持った医師が私の頭皮の画像を見ながら現在のAGAの進行度や、血圧などの持病を考慮した上での治療方針を明確に示してくれたことで、暗闇の中で道しるべを見つけたような安堵感を覚えました。医師からは、60代のAGA治療は維持と改善のバランスが重要であり、劇的な変化を急ぐよりも副作用を避けながら健康的に髪を育むことの大切さを説かれ、提案された内服薬と塗り薬を毎日のルーチンとして開始することになりましたが、その日から私の意識は「薄毛を隠す」ことから「髪を育てる」という前向きなものへと劇的に変化しました。毎朝、洗面台で頭皮の状態をチェックし、処方された薬を丁寧に塗りながら、指先で頭皮を揉みほぐす時間は、自分自身の身体をいたわる大切な儀式となり、それまでは適当に済ませていた食事も、髪のためにタンパク質や亜鉛を意識して摂るようになるなど、生活全般において健康への意識が飛躍的に高まりました。治療を開始して半年を過ぎる頃には、明らかに髪の一本一本がしっかりして立ち上がりが良くなり、帽子を被らずに外出することへの抵抗感が消えたことで、ウォーキングのコースも広がり、以前よりも活動的な毎日を過ごせるようになりました。六十五歳という年齢で治療を始めることに周囲がどう思うかという不安もありましたが、実際に髪が増え始めると妻からも表情が明るくなったと喜ばれ、自分自身の満足度がこれほどまでに日々の幸福感に直結するのだと驚かされる毎日であり、外見を整えることは心の健康を保つための最良の処方箋であることを確信しました。今、同じように薄毛を年齢のせいにしている同世代の方がいるなら、まずは専門家の意見を聞くという一歩を踏み出してほしいですし、科学に裏打ちされた治療と自己管理を組み合わせることで、60代の日常はいくらでも輝きを取り戻すことができるということを、私自身の体験を通じてお伝えしたいと思っています。
専門クリニックで変わった六十五歳の日常